気持ちを書くブログ

写真撮影、コンピュータが好きです。あと本とゲーム。落語も好き。おしゃべりも好き。

天才の発言

誰しもが、誰かに言われたことで心に強く残っているものや、いたく感銘を受けた発言というものがあるのではないだろうか。

僕にも沢山あるが、そのうちの一つを思い出した。

僕がとあるベンチャー企業プログラマーのアルバイトをしているときのこと。

そこの社長は元々アクセンチュアという巨大ITコンサルで馬車馬のように働いてから独立した方で、その当時からの付き合いのあるTさんという方を紹介してくれた。

僕は今までの人生で、天才だと思う人に二人だけあったことがある。

一人は、父親のつてで紹介してもらったリンゴの会社のエンジニアの方。

もう一人が、そのTさんだ。

Tさんも元々はアクセンチュアで働いていて、そこから富士通のエンジニアとして転職したらしい。

Tさんは俗にいう天才って人だったと今でも思う。

僕はIQが高いことは特に天才だとは思わない。

IQはあくまで、パズルを解く速度が早いだけで、実社会で際立った才能を見せるとは限らない。

例えていうなら、IQはパソコンのCPUみたいなものだと思っている。

よいCPUの方が演算速度は確かに早いけれど、しょぼいメモリーだったらスペックも大したことはないし、それに何より、パソコンで大切なのはそれをどう使うかである。例えば、超絶スペックのパソコンで、ひたすら高画質のAVを再生していたとして、なんの意義があるだろうか。または、何かに飛び抜けた知識があっても倫理観に乏しかったら困りものだ。

話が逸れた。

天才の定義は人によって違うけれど、シャーロックホームズの言った発言(つまりコナンドイルの発言になるが)が僕にはしっくりときている。

「天才とは無限に努力する人のことである」

Tさんに話を戻そう。僕は社長に引き合わせてもらい、Tさんと話す機会を得たので、Tさんに色々と質問攻めをした。

当時の僕はギラギラしていて、ともかくどうしたら素晴らしいエンジニアになれるのかをTさんから教わろうとした。

そして、Tさんはすごく簡単な回答を教えてくれた。

「そうだなぁ、これはすごくとりあえずの話なんだけどね。まずは足が届く範囲で一番大きい本屋さんに行くといいよ。そしたら、目当ての分野のコーナーに行くんだ。そして、その本棚にある、君が学びたいと思っているものに関する本を片っ端から全部購入するんだ。そして、それを愚直に全部読む。そうしたら、とりあえずその分野で何かしらの仕事にありつけるぐらいにはなってるよ。」

Tさんは"とりあえず"の部分を強調して言った。

ちなみにTさんは高校生の時、このノリで東大受験も合格したらしい。

ぶっ飛んでるけどシンプルな話で僕はその話を気に入った。

先日図書館に言った時、この話をふと思い出した。

そして、"とりあえず"、ここの本を全部読めば大体のことに精通した人間になれるなと思った。

そこで、計算をしてみることにした。

この図書館の蔵書は90万冊。

僕が平均寿命まで生きると仮定すると僕の残りの人生は59年。

日数にして約21500日。

つまり、1日に40冊ぐらい読めばその図書館の本を全て読むことができる。

要するに不可能だ。

この計算はとても雑で、例えば図鑑や地図など”読む”ためのものでない本もあれば、内容の重複したもの、または児童書など新しい知識を得るには非効率なものなどを除外していけば、そもそもの母数は90万冊から大きく減ることにはなるだろう。

しかし、どのみち現実的な数字ではない。

日本速読速脳協会によれば、日本人が生涯で読む本の平均は約2000冊らしい。

(ちなみに僕は速読は信用していない。速読を身につけたくて、速読術という本を速読したけれど内容がさっぱりわからなかったからだ。というのは冗談だけれども、速読は全ての本に適用できるわけではない。速読批評に入るとまた話が長くなりそうだからそれはまた次の機会にする)

図書館の本の0.2%だ。

この世には学べることが無数にある。

しかし、人類の叡智の全てに触れるには、人間の一生は短すぎる。

まさしく、少年老い易く学成り難しなのだろう。

とある保健所の生物学者とお話ししたときに、こんな話を聞いた。

「室賀くん、僕はね、今でこそ生物学者なんて名乗っているけれど、学部生の時の専攻は哲学だったんだよ。それでね、4年間哲学を勉強してわかったことは、この世には一生かけても読みきれないほどの哲学の本があるってことだったんだ。それで僕は当時はまだ(というか未だに)研究があまり進んでいない昆虫の生態学について学ぼうと思って専攻を変えて勉強し直して大学院に入ったんだよ」

どうやら、哲学という分野の本棚ですら、一個人には読破することは難しいようだ。

これにより、Tさんの発言を否定したいわけではない。

むしろ、Tさんは正しいと思う。

興味のある分野の本棚を全部読み漁るぐらいの根気がなければ、"専門職"は務まらない。

問題は、どこの本棚にどれくらいの時間を割くことができるのかという問題だ。

僕らの人生には、図書館の0.2%を学ぶ時間しか与えられていないらしい。

まずは、かじりつきたい本棚が見つかるまでは、乱読を続けることにする。